アメリカの洋上風力発電 

アメリカの洋上風力発電 

電力需要の20%を風力発電でまかなう

アメリカ国旗 アメリカは国土面積が広く、内陸部には未利用の土地が多く残されているため、それらの土地を利用した風力発電が普及しています。以前から、カリフォルニア州やテキサス州に、大規模なウィンドファーム(風力発電基地)がいくつも建設されています。エネルギー省は、2008年に、風力発電の拡大方針を発表し、2030年までにアメリカにおける電力需要の20%を風力発電でまかなうという目標を打ち出したことから、風力発電の建設に一段と弾みがついているようです。

従来、アメリカは世界で最も風力発電の設置が進んでいる国とされていましたが、2010年に、金融危機の影響で風力発電市場が縮小し、累積導入量で、世界トップの座を中国に明け渡しました。それでもアメリカの風力発電設備容量は、2010年末で40GW(4000万kW)と、中国と並んで世界最大級の風力発電国の地位を維持しています。

国内における石油、石炭、天然ガスなどのエネルギー資源が豊富アメリカはもともと、国内における石油、石炭、天然ガスなどのエネルギー資源が豊富ですが、1970年代の石油危機以降、同国は、国内の化石エネルギー資源を出来るだけ温存する政策を推進しています。というのも、これらの国内資源は、長期的には枯渇化の恐れがあり、エネルギー資源を安全保障上の戦略物資として確保しておく必要があるという政策判断からです。そうした政策判断から、風力発電などの再生可能エネルギーによって、国内のエネルギー需要をまかなおうという方針を打ち出しました。

洋上風力発電のコストは陸上の2倍

★ アメリカは、風力発電、それも陸上の風力発電に力を入れてきましたが、洋上風力発電については、ヨーロッパ諸国に比べると出遅れています。それも、国内に陸上風力発電設置の余地が大きく、また、エネルギー資源も豊富であるという事情によります。また、洋上風力発電については、建設コストが陸上風力発電に比べて高いということも、ネックとなっていました。アメリカ国内の試算では、洋上風力発電のコストは陸上に比べて2倍といわれています。

初の洋上風力発電計画を推進

アメリカ・自由の女神像 しかし、そうしたアメリカにおける洋上風力発電への消極的な姿勢も、オバマ政権のエネルギー政策によって大きく転換されつつあるようです。オバマ大統領は、風力発電を始めとする再生可能エネルギーを大幅に導入する方針を打ち出し、その一環としてアメリカ初となる洋上風力発電の建設計画を明らかにしています。この計画は、マサチューセッツ州ナンタケット海峡沖に3.6MW程度の風力発電設備を130基建設するというもので、ケープウィンドプロジェクトと呼ばれています。

アメリカ合衆国長年、検討されてきたプロジェクトですが、実現に至らなかったのも、建設コストが高い上、景観を損ねたり、生物・生態系に悪影響を与えるという地元や環境保護団体などからの反対が強かったためです。現在では、ケープウィンドプロジェクトは、アメリカにおける洋上風力発電の幕開けを告げるという見方が多いようです。事実、このプロジェクトに続いて、ニュージャージー州、ロードアイランド州、デラウエア州など、合計12件の洋上風力発電プロジェクトが提案されています。アメリカ政府は、洋上風力発電プロジェクトの推進によって、エネルギー確保の面だけでなく、関連産業への波及効果など、雇用拡大の面でも貢献できると、大きな期待を寄せています。