洋上風力発電の仕組み(着床式)

洋上風力発電の仕組み(着床式)

プラントの基礎を海底に固定

着床式洋上風力発電 洋上風力発電は、ヨーロッパなどでは相当普及していますが、日本では、ようやく緒についた段階です。洋上風力発電は文字通り海上で風力発電を行う仕組みですが、そのシステムには、大きく分けて二通りの工法があります。一つは、洋上といっても、陸地に近い比較的遠浅の海岸あるいは港湾などで風力発電プラントを建設する工法です。工法の特徴は、プラントの基礎を海底に固定して建設するやり方で、着床式洋上風力発電といわれます。

それに対して、海上に船を浮かべるようにして、プラントを建設する、浮体式工法というシステムがあります。このシステムは、設備を浮体として海に浮かべますが、あちこちに移動しないよう、ワイヤーで海底に固定します。いずれの工法も、現在、各国で実用化、あるいは研究中の工法で、それぞれの国、海域や風況などによって、採用する工法が違ってきます。

洋上風力発電は、陸上と違って、年間を通して比較的強い、しかも安定した風況を得られるのが特徴です。ヨーロッパ各国で早くから洋上風力発電プラントの建設が進んだのも、そうした海上の利点に着目したためです。とくにヨーロッパの場合、年間を通して偏西風が吹き、しかも遠浅の海岸の多いことが特徴としてあげられます。

そのため、ヨーロッパ各国で普及している洋上風力発電プラントは、浮体式が一部の国で研究がなされていますが、現在実用化されている設備は、ほとんどが着床式のプラントです。それに対して、日本の場合、現在、洋上風力発電は、実証事業の段階ですが、着床式と浮体式の両方のプラントの建設が試みられています。

銚子沖のプロジェクトが代表例

日本における着床式プラントはいくつかありますが、代表的なものは、銚子沖で実証研究が進められている東京電力と独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構の共同プロジェクトです。このプロジェクトは、銚子市名洗町の沖合3.1kmのところに実証研究用の洋上風力発電機設備を建設、運転を通じて技術的な研究や環境への影響を調べます。設備自体は2012年に完成しました。この設備は、海底に土台を固定する方式で、沖合に設置された着床式の洋上風力発電としては国内最大です。出力は2400kW。この出力は一般家庭1200世帯の電力を賄える規模です。現在試運転を実施中で、2013年から発電を開始し、2015年3月まで研究が行われる予定です。

銚子市内の沿岸部や台地には現在34基の風力発電装置がありますが、沖合は年平均7メートルほどの風が吹き、風力発電に適しているとされています。一方で、潮のうねりが強いことなどの立地環境も指摘されていますが、それも、厳しい環境での実証データが得られることなどから研究場所に選ばれたようです。

風向きや風の強さを調べる

風向きや風の強さを調べる 風車は海面から高さ約126メートル、羽根の直径は92メートル。水深12メートルに風車の基礎を設けており、海底ケーブルで送電する方式です。風車から約285メートル離れて建てられた高さ100メートルの観測タワーで、風向きや風の強さと発電量の関係などを調べることにしています。

事業費は約50億円で、風車に35億円、観測タワーに15億円かかったとされています。今後の洋上風力発電の普及のため、風車の耐久性などの技術課題や海風の特性把握、環境影響評価手法の確立などが実証研究の目的となっています。政府は再生可能エネルギーの導入拡大の柱の一つとして、洋上風力発電を掲げており、着床式による銚子沖での研究成果に大きな期待が寄せられています。