日本における洋上風力発電の現状

日本における洋上風力発電の現状

海洋エネルギーの一つとして注目

四面を海に囲まれた日本 日本は現在、再生可能エネルギーの導入拡大に取り組んでいますが、中でも洋上風力発電は今後期待されるエネルギーの一つとして、その推進に力が入れられています。洋上風力発電は風力発電の一つですが、近年、日本では、海洋エネルギーの一つとして捉えられているようです。

海洋エネルギーには、海流発電、波力発電、潮流発電などいくつかの発電エネルギーがありますが、もっとも実用化が近く、しかも潜在エネルギーの多い発電として注目されているのが洋上風力発電です。陸上における風力発電は、国土面積の狭い日本として、今後、大幅な拡大の余地は少ないといわれます。というのも、陸上風力発電の場合、設備設置に広い土地面積が必要ですが、国土が狭く、人口密度の多い日本では、今後大きな設置余地が少ないと見られているからです。

政府は白書で利用促進を掲げる

加えて、環境や立地に関するさまざまな規制が、風力発電の拡大にブレーキとなっています。そこで、四面海に囲まれた日本として、無限といわれるほどに存在する海のエネルギーに注目する機運が高まってきたのです。政府は、2012年8月に「平成24年版海洋の年次報告書」を発表しましたが、その中で、「海洋再生可能エネルギーの利用促進」と題する特集を掲げました。こうした特集を掲げるのは異例ですが、それも、政府が、海洋エネルギーを、再生可能エネルギーの柱の一つに据えようという意気込みの現われとみることができます。

その年次報告の中で、日本における洋上風力発電のポテンシャルは、15億kWとされています。日本の総発電設備規模は2億4000万kWですから、それを大きく上回る規模です。仮に、洋上風力発電が将来、大幅に導入されたとすると、日本の全電力をまかなうことも可能になるといえます。もちろん、技術的に、あるいは経済性があるかどうかが大きなポイントですが、潜在的な導入可能量としては、きわめて大きなエネルギーが存在することは間違いありません。

各地で実証試験

各地で実証試験 洋上風力発電の導入ポテンシャルの大きさに注目して、近年、国内では洋上風力発電の実用化を目指して、各地でさまざまな実証試験や実証研究が行われています。2004年には北海道棚瀬港や山形県酒田港で、2010年には茨城県鹿島港でそれぞれ自治体、民間企業が中心になって事業が進められています。

2012年には、国の方でも、長崎県五島椛島沖合いで環境省が京都大学に委託して実証事業を進めているほか、福島沖合いでは、経産省が、丸紅や東京大学に委託して、民間企業とともに事業を推進しています。また、千葉県銚子沖合いでは、経産省の実証研究事業として、東京電力、東京大学が取り組みを始めているほか、福岡県北九州市沖合いでは、電源開発などが、研究を進めています。

これらの事業の中では、すでに発電設備を設置して電力を供給しているケースもありますが、大部分は、2012年から2015年にかけて設備を設置し、電力供給を始める見通しです。これらの実証事業が成果を収めれば、民間企業は相次いで、洋上風力発電事業に参入すると思われ、国内での普及に弾みがつくと見られます。