洋上風力発電の実証試験(五島沖)

洋上風力発電の実証試験(五島沖)

環境省が京都大学に委託して実施

五島沖洋上風力発電所の位置 洋上風力発電の実証試験としては、環境省が平成22年度から、長崎県五島市椛島(かばしま)周辺海域で行っている事業があります。この事業は、同省が京都大学に委託して進めているもので、これまで、候補海域等の選定を進めてきた結果、椛島周辺が海域としてもっとも適していると判断したものです。

環境省では、平成25年度頃に、2000kW級の浮体式洋上風力発電の実証機を設置する予定ですが、この出力規模は、日本では最大級のものです。現在、同省では周辺海域における環境影響評価を進めている段階です。

実証機の候補海域や基本設計等については、受託者である京都大学が事務局となって進めてきた浮体式洋上風力発電実証事業検討会で決まったものです。この検討会では、実証事業を行うに当たって、周辺地域関係者と話し合いを重ね、地域の同意・賛同を得てきました。椛島は面積が8.75平方km、人口は194人(平成22年11月現在)の小さい島で、長崎半島の南、天草灘に位置します。全島は長崎市に属し、長崎市とは、途中無人島の中之島を経由して架橋された椛島大橋(1986年開通、全長227m)で結ばれており、長崎市内より、路線バスが運行されています。

水深、風速ともに適した立地環境

水深、風速ともに適した立地環境 この地点の海域は、水深が約100mといわれ、浮体式洋上風力発電の設置環境として適しているとされています。浮体式洋上風力発電の環境としては、水深が50〜200mの間といわれます。また、NEDO(独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)の風況マップによると、椛島周辺における高度70mの高さでの年平均風速は7.0m(毎秒)であり、十分な事業可能性を持つと評価されています。

 環境省のスケジュールによると、環境影響評価の調査を平成24年度までに終了し、併せて実証機の設計・製造を行い、平成25年度から27年度の間に実証機の設置、実証運転を開始するという計画で事業を進めていくことにしています。また、実証運転の開始に先立ち、事業性の評価のため、100kW以下の小規模試験機を実施海域に設置し、環境影響評価や安全性に関するデータの収集を急ぐことにしています。

小規模試験機は、スパー型と呼ばれる、細長い円筒形状の浮体構造の上に、風車およびタワーが海上に突出して固定されている構造を持っています。細長い円筒形は風や波が当たっても揺れにくいという利点があります。この小規模試験機は、3本のチェーンで海底に係留されます。

 浮体構造としては、浮体上部には鋼、下部にはコンクリートを使用するもので、京都大学と戸田建設グループによって開発された「ハイブリッドスパー型」と呼ばれる形式を採用しています。コンクリートは水圧や錆にも強いため、これを浮体下部に用いることでコストダウンを図るとともに、重心を下げ安定性も向上させています。送電系統に連系する浮体式洋上風力発電施設として、このハイブリッドスパー構造を採用したものは、世界で初めてとなります。

平成28年度頃に実用化へ

五島沖の洋上風力発電 五島市の市民、関係団体、行政等は、すでに五島市地球温暖化対策協議会を設立しており、同協議会では、平成21年3月に「地球温暖化防止対策行動計画」を策定しています。この計画では、五島市における自然の恵みを生かし、再生可能エネルギーとしての洋上風力発電の利用促進を積極的に進めるとの方針を掲げており、今後、環境省に、洋上風力発電の早期実用化を要請していくことにしています。

 環境省では、実証機の設置、運転と並行して、事業性に関する評価も実施し、実用化の目途として平成28年度頃を予定しているようです。