デンマークの洋上風力発電

デンマークの洋上風力発電

風力発電は1980年代から組合方式で推進

デンマーク国旗 デンマークは、イギリスなどと同様、北海油田による石油・天然ガスの産出があり、エネルギー資源には比較的恵まれた国です。しかし、地球環境問題の世界的な高まりから、化石燃料消費の抑制と、再生可能エネルギーの導入拡大政策を推進しています。デンマークの風力発電は、歴史が古く、1980年代より、風力発電組合が設立され、個人の共同所有方式により、多くの風力発電が建設されました。現在では、国内電力供給の3割近くを風力発電でまかなっているといわれます。

洋上風力発電についても、1991年に、世界で初めてプラントを設置し、洋上風力発電の先進国とされています。設備容量は、世界第1位のイギリスには及びませんが、2010年時点では660MWの規模となっています。風車の基数は310基に達しています。同国では、洋上、陸上を厳密に区別することは少なく、風力発電として一括して事業に取り組んでいます。

2050年までに化石燃料消費をゼロに

2050年までに化石燃料消費をゼロに デンマーク政府は、エネルギーの将来に関して、2050年までに化石燃料の消費をゼロにするという野心的な目標を掲げています。そのための中核エネルギーとされているのが、風力発電です。同国は国内が平坦であり、風力発電には非常に適した地形です。そうした恵まれた地形を生かして、現在、風力発電の発電量は4000MWとされており、国民一人当たりの発電量としては世界一を誇っています。そうしたエネルギーの主役ともなっている風力発電を、政府は2020年までにエネルギー供給の50%に高めるという目標を打ち出しています。

 風力発電だけで国内エネルギーの半分をまかなうというのは一見、不可能のように見えますが、デンマーク政府は、それを実現するために、さまざまな政策を推進しています。例えば、洋上風力発電を含めて、風力発電の風況は時として不安定になることがあります。そうした時、エネルギー供給としては、さまざま障害を生ずることになります。そうした障害を避けるため、政府は、ノルウェー、スウエーデン、フィンランドの北欧3カ国との間で、電力取引市場を形成、電力の安定供給に努めています。

需給で決まる電力価格

需給で決まる電力価格 電力取引市場は、例えば、デンマークで風が弱い時は、ノルウェーやスウェーデンの水力発電による電力購入ができる市場です。また、風力発電に余力が生じた場合には、他の国々に売電することができます。その場合、取引価格は、市場における電力の需給関係で決まります。つまり、需要が多いときには、価格が高くなり、少ないときには安くなるというわけです。こうした電力取引市場を形成するためには、各国が送電線網でつながっていなければなりません。

 デンマーク政府は1999年に、送電網を発電網と切り離すことを決め、国内はもちろん、風力発電の送電網を優先的に各国と接続することを決めました。それまではデンマークの発電電力会社は、発電・送電網を独占していたため、電力の売買が広がりませんでした。

 政府が風力発電の大幅の導入を進める背景には、こうした政策の取組を見逃せませんが、そのほかにも、洋上風力発電に対して固定価格による買取制度があり、発電会社の事業維持・拡大に役立っているといわれます。そうした政府による積極的な政策支援が、洋上風力発電拡大の原動力になっているといえます。