オランダの洋上風力発電

オランダの洋上風力発電

歴史古い風車の国

オランダ国旗 オランダは風車の国として知られていますが、観光用写真などで見られる風車は、製粉や干拓用の風車で、オランダでは、15世紀頃からそれらの風車が活躍しました。風車がウィンドミルと呼ばれているのも、「粉挽き」に語源の由来があります。かつてオランダには、千基以上の風車があったといわれますが、現在は、キンデルダイク地区に100基程度が観光用に残っているだけです。現在わずかですが、干拓用として動いている風車があります。

オランダの風車の歴史は古いのですが、発電のための風力発電となると、本格的に導入されたのは2000年代以降のことで、姿、形は昔のものとはまったく異なっています。かつてのオランダの風車は、風車を動かす時には羽根の柄に幌をかけて回し、停止するときには幌を外すというやり方でした。現在の風力発電はどの国に採用されているのも、自動運転できるシステムが採用されています。

風力発電全体の設備容量は小さい

オランダの風車 オランダは、国土面積が狭く、陸上に多数の風力発電を設置することが難しいため、洋上風力発電に活路を見出して建設を進めてきました。その結果、洋上風力発電の設備容量は2010年時点で247MWと、ヨーロッパでは、イギリス、デンマークに次ぐ世界で3番目の洋上風力発電国となっています。しかし、風力発電全体の規模は決して多くありません。オランダの風力発電の設備容量は2011年時点で、2300MW(230万kW)と、日本の2500MWよりも小さいのです。 

 オランダはこれまで、国内におけるエネルギー資源が比較的豊富なため、風力発電にはそれほど力を入れてこなかったといえます。オランダはEU(欧州連合)の中では2番目の天然ガス産出国であり、EUの産出量の30%を占めています。そのため、3分の2は自国内で消費し、残りを輸出しているほどです。また、石油も北海油田における産出があります。ただ、北海油田における産出量は近年減少傾向がみられ、国内消費の多くの割合を輸入に頼っているのが現状です。

2006年に初の洋上風力発電

2006年に初の洋上風力発電 オランダにおけるこうしたエネルギー資源の実情から、風力発電にはそれほど積極的に力を入れてこなかったことは事実です。しかし、地球温暖化対策の必要性などから、2000年代以降、風力発電、中でも洋上風力発電に力を入れ始めています。オランダ政府は2006年に、同国で初めてとなる洋上風力発電を建設、再生可能エネルギーのシンボル的存在として、その意義を強調しています。この設備は北海に36機の風車を並べたもので、年間10万世帯以上の電力需要を満たすことができるとされています。

ただ、オランダ国民の風力発電、洋上風力発電に対する見方は、政府とは少し異なっているようです。単に、景観を損なうといった理由のほかに、国民の家計を圧迫しているという批判が強いのです。政府は、風力発電の拡大のために、相当の額の補助金を支出しており、それが国民の税負担の増大を招き、国民の反発を招いているようです。また、出力の不安定な風力発電を大幅に導入しようとすると、出力を安定化させるために、火力発電を増やさなければならないというジレンマに陥っています。これでは、何のための再生可能エネルギーなのか、といって意見が多いようです。こうした国民の声にどう対応していくのか、オランダ政府の風力発電への取組が問われています。