洋上風力発電の実証試験(福島沖)

洋上風力発電の実証試験(福島沖)

経済産業省がプロジェクトを推進

福島県沖での浮体式洋上ウインドファーム実証研究の計画 洋上風力発電は、日本ではようやく、緒についたばかりであり、今後の商業化を目指してさまざまな実証研究が行われています。実証研究では、プラント建設に伴う技術的な課題はもちろん、海底の地形や季節ごとの詳しい風況データを取得することが課題です。

現在行われている洋上風力発電の実証研究では、福島県沖で進められているプロジェクトがあります。このプロジェクトは、経済産業省が推進しているプロジェクトで、丸紅など民間企業10社と東京大学に委託して、具体的な事業が進められています。実証研究といっても、将来の本格的発電に備えた発電設備の建設です。

プロジェクトでは、実施主体として、10社の企業と東大がコンソーシアム(連合体)を組織し、丸紅がプロジェクトインテグレーター(管理者)を務めることになっています。実証研究事業では、福島県沖合いの海域に、浮体式の風力発電機3基と、洋上サブステーション10基を建設します。

2011年度の第1期実証研究事業では、2MW(2000kW)のダウンウィンド型浮体式洋上風力発電設備1基と、66kV浮体式洋上サブステーションおよび海底ケーブルを設置しました。

2013年度から2015年度にかけて行なう第2期実証研究事業では、7MW(7000kW)級の浮体式洋上風力発電設備2基を設置する予定です。

将来は大規模なウィンドファーム展開

実証研究事業の推進は、日本における浮体式洋上風力発電のビジネスモデルを確立することにつながり、将来の大規模浮体式ウィンドファームの事業展開に大きく寄与するとみられています。

サブステーションをはじめとするウィンドファームの実証研究事業は世界で初めての試みとなります。事業を通じて蓄積されるノウハウは、国内のウィンドファームだけでなく、海外プロジェクトにも適用・展開が期待され、洋上ウィンドファームを日本の主要な輸出産業の一つに育成できると見込まれています。

経済産業省が福島県沖を洋上風力発電の実証研究事業の海域として選んだのは、海底の地形や風況が洋上風力発電に適していることに加え、東日本大震災による災害から福島県の復興を加速させたいとの判断があったからです。福島県は、大震災による被害で、地域産業は壊滅的被害を受けましたが、経済産業省では、産業を起こす手がかりの一つとして、洋上風力発電をシンボルにしたいとの意向があったようです。

雇用拡大や漁業の振興を図る

雇用拡大や漁業の振興を図る 洋上風力発電の建設に当たっては、設備建設だけでなく、関連機器、装置の生産、輸送、送電線網の建設など、さまざま企業への波及効果が期待されます。それに伴う雇用の拡大も見逃せません。さらに、洋上風力発電の建設は漁業振興にもつながると期待されています。洋上風力発電設備の浮体を集魚に利用して、海洋牧場を作る構想も検討されています。福島県には東京電力の福島第一、第二原子力発電所がありますが、事故で地域に大きな被害を出したことから、経済産業省では、洋上風力発電を新しいエネルギーの一つとして、福島県の復興を後押ししたいとしています。