洋上風力発電と地域産業

洋上風力発電と地域産業

漁業の振興に貢献

漁業の振興に貢献 洋上風力発電は、再生可能エネルギーとして、また、国産のエネルギーとして、エネルギー供給面での役割は大変大きいのですが、それと同時に見逃せないのは、洋上風力発電設置に伴う地域産業への波及効果です。洋上風力発電の場合、当面、漁業への影響が考えられますが、洋上風力発電の設置により、その基礎となる構造物は、格好の漁礁となり、集魚効果が大きく、漁業の振興に貢献することが期待されています。また、魚や水産物を育て、収穫量の拡大を図る、いわゆる海洋牧場の構想も一部で検討されています。洋上風力発電と漁業との共存共栄を通して、地域産業の活性化を図る動きが今後、活発化すると見られます。

福島県沖で実証研究

洋上風力発電が、地域産業の振興を図る動きとしては、福島県沖で進められている浮体式洋上ウィンドファーム(風力発電基地)の実証研究があります。この事業は、再生可能エネルギーを中心とした新たな産業・雇用の創出を図り、東日本大震災からの復興促進を後押しする事業の一環であり、被災地の一つである福島県の産業振興に大きなねらいがあります。

ウィンドファームは、洋上にいくつもの風力発電設備を並べ、それによって大きな電力を確保するものです。現在、経産省が、東京大学と民間企業10社に委託して事業を進めていますが、事業の一つとして、地域の水産業、漁業への貢献が検討されています。

ウィンドファームでは、風力発電設備だけでなく、さまざま付帯設備を設置することになるため、そうした設備を漁礁などに活用することが研究されています。

漁業以外では、洋上風力発電設備の機材や、基礎構造物などの工場建設が必要になります。そのため、関連資材の生産に携わる従業員の雇用が生じます。洋上風力発電だけでなく、陸上風力発電の建設も進むとみられることから、風力発電全体としての生産工場が増加すると見られます。

運転時のメンテナンス要員も必要

風力発電のメンテナンス 洋上風力発電の場合、プラントの建設だけでなく、運転時におけるメンテナンス要員も確保しなければなりません。メンテナンス要員は、人数的にはそれほど大きな数ではありませんが、専門性の高い技術者が期待されるため、人材養成のための教育施設などの整備も必要になると思われます。このほか、送電のための海底ケーブルの敷設や、蓄電設備の設置など、洋上風力発電固有の技術、施設が必要となります。

地域産業への貢献という観点からは、洋上風力発電を観光資源として活用することも一部の地域で構想されています。陸上風力発電施設を地域おこしの一環として活用するケースは、国内でいくつか見られますが、洋上風力発電の場合、将来の新しいエネルギー施設だけに、観光資源として活用する自治体や企業が増えそうです。 洋上風力発電は、このように、観光資源や、地域における関連産業への波及、さらに漁業振興などによって、地域経済の活性化や雇用の確保に貢献することになりそうです。