洋上風力発電のコスト

洋上風力発電のコスト

コスト検証委員会が試算

建設中の洋上風力発電 洋上風力発電のコストについては、現在のところ、平成23年12月に、当時の民主党政権におけるエネルギー・環境会議のコスト等検証委員会がまとめた各電源のコスト試算が最新のものです。

この試算は、「原子力発電の稼働を2030年代にゼロにする」という政府の方針を実現するための各電源のコストをはじき、原子力発電の依存度を引き下げながら、再生可能エネルギーを含め、他の電源をどのように組み合わせるかを検討するための前提として試算したものです。

その中で、風力発電については、陸上風力発電と洋上風力発電の二つの方式についていくつかの前提を置いて試算しました。それによると、陸上風力発電の場合、現在の発電コストは、kWh当たり9.9円〜17.3円と幅のある値となっています。これは、地域によって、風況が異なる上、送電線の距離などによって、コストが変わってくるためです。 

現在のコストはkWh9.4円〜23.1円

それに対して、洋上風力発電は、kWh当たり9.4円〜23.1円となっています。下限のコストが陸上風力発電に比べて安くなっていますが、これは、洋上といっても陸地に近い海岸、あるいは港湾における風力発電を対象としたものです。また、洋上風力発電の場合、設備・資材の輸送コストは、陸上に比べて安くなるといわれます。陸上風力発電の場合、一般的には、都市部からかなり離れた地域、あるいは山間部などに建設されるケースが多く、鉄道とトラック輸送が中心となるからです。洋上の場合は、船での輸送のため、コストは大幅に低減されます。

こうしたことから、洋上風力発電では、下限のコストは、陸上風力発電に比べて安くなります。ただ、上限のコストは、洋上風力発電の場合、陸上に比べてかなり割高となっています。これは、陸地からかなり離れた洋上風力発電であり、その地点での建設コストは陸上より高くなり、また、送電線は海底ケーブルの敷設が必要となることから、コストはかなり高くなります。

これらはいずれも、2010年時点でのモデルプラントを対象としたもので、現在の設備による発電コストと考えてよいと思われます。

コスト試算では、2030年における発電コストも試算しています。これにもいくつかの前提がありますが、とくに、技術革新が今後急速に進んで、設備・資材価格や建設コストが大幅に低下した場合とそうでない場合とで、コストに大きな差が出ます。

2030年には陸上より安くなる?

陸上の風力発電 2030年では、陸上風力発電の場合、下限がkWh当たり8.8円、上限が17.3円となっています。それに対して、洋上風力発電では、下限が8.6円、上限が23.1円となっています。これで見る限り、技術革新が進んで、設備・資材の価格や建設コストなどが低下すると、洋上風力発電の下限コストは、陸上風力発電コストを下回ることになります。ただ、上限のコストは、陸上、洋上とも2010年モデルのコストをそのまま据え置いた形にしています。

いずれにせよ、陸上風力発電、洋上風力発電とも、技術革新すなわちイノベーションが進展すると、下限の価格は低下すると予測されています。ただ、コスト試算では、洋上風力発電については、着床式のみを対象としており、浮体式については、除いています。というのも、浮体式は、国内ではようやく実証研究が始まったばかりであり、データが少ないことによるものです。

洋上風力発電では、今後、むしろ浮体式プラントが普及するのではないかとみられ、普及度合いによっては、プラントの量産化が期待でき、それに伴って、コストの大幅な低下が期待されます。