洋上風力発電の将来と課題

洋上風力発電の将来と課題

ヨーロッパに比べて10年の遅れ

ヨーロッパに比べて10年の遅れ 洋上風力発電は、日本においてはようやく実用化が緒についたばかりです。洋上風力発電が普及しているヨーロッパ諸国に比べ約10年の遅れがあるといわれます。その遅れを取り戻し、洋上風力発電を日本のエネルギー確保の主役の一つとするためには、いくつかの課題が指摘されています。一つは、風力発電を含めて、政府が、中長期的な目標を定めることです。諸外国では、再生可能エネルギーについて、明確なロードマップを掲げ、それに向けた施策、政策支援などを打ち出しています。日本には、今のところ再生可能エネルギーについては、ある程度の方向は出されていますが、洋上風力発電を含めた風力発電については、必ずしも明確になっていません。

風力発電の業界団体である日本風力発電協会は、日本における将来見通しを独自の試算として公表しています。それによると、2020年時点には1100万kW以上、2030年時点では2700万kW以上、2050年時点では、5000万kW以上が可能であると試算しています。この時点で風力発電の導入量は国内電力需要量の10%以上になるとしています。

こうした業界の見通しを、政府としても検証し、それを政府のエネルギー政策の中で明確に位置づける必要があります。

実証実験海域の整備を

風力発電は、今後、陸上においては、用地確保の困難性などから、立地の余地が少なくなりつつあるといわれます。そこで近年注目されているのが、洋上風力発電です。日本は四面を海に囲まれた島国であり、領海や排他的経済水域を合わせたいわゆる自国の海の広さは世界で6番目です。そうした広い海域を持つ日本にとって、洋上風力発電の将来性はきわめて大きいといわれます。

洋上風力発電については、現在、実証研究の段階であり、環境省と経産省がいくつかの海域で研究事業を実施しています。しかし、民間企業が実証研究事業を行う場合、海域にはさまざま規制があり、簡単に事業を進めるわけにはいきません。洋上風力発電が実用化段階にあるヨーロッパの場合、とくに実用化が進んでいるイギリスでは、国が大規模な総合実証実験海域を整備し、そこで、さまざまな研究事業が行える体制を整えています。そうした、国による環境づくりが、イギリスを世界の洋上風力発電先進国に押し上げている大きな要因といえます。日本においても、民間企業が実証研究事業を行いやすい環境を整備することが急務となっています。

規制、基準の見直しが必要

規制、基準の見直しが必要 洋上風力発電の場合、沿岸であれ港湾であれ、海域を利用することから、漁業や船舶航行など、海域利用権をめぐるさまざまな規制をクリアする必要があります。また、洋上風力発電は、構造物であり、さまざまな技術基準が適用されています。これらの基準は、例えば建築基準法や電気事業法に基づくものなど、極めて複雑で、中には重複しているものも多いといわれます。そのため、今後、これらの規制や基準を見直し、洋上風力発電の導入が円滑に進むよう、制度、仕組みを改めることが課題といえます。