港湾における洋上風力発電

港湾における洋上風力発電

風況が比較的安定している

港湾に建つ風力発電 洋上風力発電は近年、そのポテンシャルの大きさから、日本でも急速に関心が高まっていますが、その中でも、とりわけ、港湾における洋上風力発電に注目が集まっています。というのも、港湾内の風況は比較的安定しており、風力発電に適した風速、風力を得られるほか、港湾管理者等の施設の管理責任者がきちんと位置づけられていることが大きいのです。また、水深や風力発電を建設する場合の施工条件も、他の海域に比べて整っていることを見逃せません。そのため、今後、国内で洋上風力発電を展開する場合、建設適地として、極めて有望であるとの見方が多いのです。とくに、風力発電プラントを数多く設置するいわゆるウインドファーム(洋上風力発電基地)を建設する場合、港湾が非常に適しているとの専門家の意見も出されています。

政府の支援で発電事業者が増大

地球温暖化対策としての再生可能エネルギーの導入は、世界的な課題でもあり、日本においては、太陽光発電と風力発電を大きな柱として、推進されています。とくにこれら再生可能エネルギーの導入を後押しするため、政府は、2012年7月から再生可能エネルギーの全量固定価格買取制度を実施し、発電事業者の参入を支援しています。

政府のそうした支援を受けて、再生可能エネルギー分野に進出する発電事業者が増大していますが、最近の傾向としては、風力発電の場合、洋上風力発電に拡大余地が大きいとして、洋上における大規模化が進む見通しとなっています。

というのも、陸上風力発電の場合、国土の狭い日本では、風況のよい適地の確保が次第に困難になっているという事情があるからです。そのため、そうした用地確保の制約のない洋上風力発電に注目が集まっています。洋上風力発電の中でも、風況が安定し、しかも、発電プラントを施工しやすい港湾での建設が、将来性の高い洋上風力発電として関係者の間で検討されています。

港湾の秩序ある整備と整合性が必要

港湾の秩序ある整備と整合性が必要 とはいえ、港湾における大規模な洋上風力発電の導入には、課題があることも見逃せません。大規模な洋上風力発電の導入は、従来の港湾の新しい利用形態でもあり、その立地による港湾への影響は極めて大きいと考えられます。そのため、洋上風力発電プラントの建設には、港湾の秩序ある整備や、適正な運営との間で、整合性を図ることが必要となっています。

具体的な課題としては、港湾における大規模な風力発電が無秩序に展開されると、港湾の整備と運営に支障を生ずる恐れがあるという点です。例えば、船舶の航行や貨物荷揚げ施設、 あるいは、水産業関係施設等への影響が考えられます。そのため、これらを管理するそれぞれの関係者が一堂に会した協議会を設置することが課題となっています。

協議会は、それぞれの所管や知見に基づいて、港湾管理者に助言を行ったり、意見調整を行うことで、港湾における風力発電の円滑な導入を支援することができると考えられています。

港湾管理者は、協議会の意見を参考に、港湾計画に、港湾の秩序ある整備と運営との間で整合性のある風力発電を位置付け、それに基づいて風力発電事業者を選定することが求められています。その場合、風力発電事業者は、公募によって選定する方法が考えられています。現在、国土交通省と環境省との間で、風力発電事業者の選定などが検討されています。

港湾における洋上風力発電の実施例は、国内では、10例があります。そのうち主なものとしては、茨城県神栖市鹿島港南海浜地区の「ウインド・パワー・いばらき」、山形県酒田市の酒田港北港地区のサミットウインドパワー、北海道せたな町の瀬棚港湾区域の洋上風力発電などがあります。