イギリスの洋上風力発電 

イギリスの洋上風力発電 

風力発電で遅れをとる

イギリス国旗 イギリスは、もともと国内にエネルギー資源が豊富だったことから、風力発電に関してはヨーロッパ各国の中では遅れをとっていました。イギリスの場合、北海原油の産出のほか、国内には石炭資源天然ガス資源などもあり、ヨーロッパ諸国の間では比較的恵まれていたといえます。

しかし、近年、石油、石炭、天然ガスなどの化石燃料の消費が、地球温暖化をもたらすとして大幅に抑制される情勢となっています。また、北海原油や国内の石炭資源などでも、将来的に枯渇化すると言う懸念も専門家の間で目立つようになっています。

イギリスの洋上風力発電イギリスでは、そうしたエネルギー資源の将来性を考慮し、新たなエネルギーとして政府が力をいれているのが、再生可能エネルギーです。なかでも北海や大西洋に囲まれ、偏西風による安定した風況を得られる同国では、洋上風力発電に注目が集まっています。陸上風力発電では、イギリスはヨーロッパ各国の中で、それほど目立つ存在ではありませんが、洋上風力発電に関しては、ずば抜けた導入量を誇っています。

2020年までに7000基を計画

2020年までに7000基を計画 2010年の実績では、イギリスの洋上風力発電の設備容量は1000MWに達しています。デンマーク、オランダなど、他の国々を大きく上回っています。ちなみに、日本はこの時点でわずか1MWにすぎません。イギリス政府は、最近、新たな大規模な洋上風力発電計画を打ち出しました。それによると、イギリスは2020年までに7000基以上の洋上風力発電を設置するといいます。この規模は、イギリス国内の全消費電力の約3分の1をまかなえるほどの大掛かりなものです。

イギリス国会議事堂事業規模は約13兆円にのぼり、送電網の整備だけでも2兆円を要するといわれます。イギリスだけでなく、ヨーロッパ各国では、再生可能エネルギーというと、風力発電が真っ先に検討課題になります。日本などの場合、太陽光発電が再生可能エネルギーの柱として取り上げられますが、ヨーロッパでは、日照時間が日本のように長くなく、冬の期間が長いことがあげられます。

逆に、ヨーロッパでは、年間を通した偏西風による安定した風況を得られるという利点があります。そうしたことから、各国で風力発電に取り組むケースが多いのですが、イギリスの場合は、島国ということもあり、洋上風力発電に着目しているようです。

王室が大陸棚の所有権

イギリス・ロンドンタワー イギリスでは、洋上風力発電の設備を設置する大陸棚の所有権は王室にあります。王室といっても直接管理しているのは、王室の財産管理をする政府の特殊法人です。この特殊法人は、北海油田も管理していますが、実際の油田開発は、開発事業者である発電会社が、区域のリース料を支払って行っています。洋上風力発電事業もそれと同様な仕組みで実施されるようです。

イギリス政府が打ち出した大規模洋上風力発電計画は、ラウンド1〜3までの段階で計画されています。ラウンド1は2001年からスタートしましたが、これはいわば試験的な事業です。2003年にラウンド2の計画が始まり、2010年にはラウンド3が実施に移されました。発電プラントがすべて建設されると、発電容量は40GWに達します。1GWはおよそ原子力発電プラント1基分に相当します。原子力発電プラント40基分ということですが、風力発電は稼働率は原子力発電の3分の1程度なので、そのまま比較はできません。しかし、それにしてもイギリスは洋上風力発電で壮大な計画を進めているようです。