洋上風力発電の必要性

洋上風力発電の必要性

東日本大震災でエネルギー不足が深刻化

風力発電の風車 洋上風力発電は日本では、ここ2、3年で急速にクローズアップされました。というのも、東日本大震災で、電力、エネルギー不足が深刻化し、新たなエネルギーとして、再生可能エネルギーの導入拡大が大きな課題となってきたためです。

再生可能エネルギーとしては、これまで太陽光発電と風力発電が大きな柱として期待されてきましたが、風力発電の場合、陸上風力発電は国内では、立地にさまざまな制約があり、今後の拡大余地が少なくなっています。というのも、風力発電で大きな電力を確保しようとすると、広大な土地が必要となり、国土の狭い日本では、土地の確保が難しいためです。また、風力発電の立地条件としては、年間を通して安定した風況を得られる場所が必要ですが、そうした場所は、国内では、北海道、東北、九州の三地域に限定されます。しかもその多くは国立、国定公園などの自然公園の中か、あるいはその近傍ということで、厳しい環境規制を受ける場合が多いのです。また、騒音公害の問題もあり、地域住民から苦情を受けるケースが増えています。

広い立地可能範囲

陸上風力発電に比べ、洋上風力発電の場合は、何といっても、立地可能範囲が極めて広いという有利さがあります。日本は四面を海に囲まれており、立地可能領域はほとんど無限といってよいほどです。

風力発電は、世界的には、中国をトップに、米国、ドイツなど、欧米諸国の設備導入が大幅に進んでおり、日本は遅れをとっています。2011年末のデータでは、中国が6200万kW、米国が4700万kW、ドイツ2900万kWなどとなっています。これに対して日本は、250万kWと世界で13番目です。日本は、現在、再生可能エネルギーの大幅な導入拡大の方針を掲げ、政策的支援によって、その推進を図っています。とくに政府が期待するのは立地ポテンシャルの大きい洋上風力発電です。現在はまだ実証研究の段階にありますが、ここ2、3年のうちには、商業化の段階に入ると期待されています。

政府は、2012年9月に打ち出した「革新的エネルギー・環境戦略」で、2030年代までに再生可能エネルギーを飛躍的に拡大する方針をまとめています。それによると、2030年代には、再生可能エネルギーの導入量は、総発電電力量の35%に引き上げる目標を示しています。現在の10%程度からみると、大幅な拡大といえます。従来、原子力発電が、日本の総発電電力量の約3割を担ってきましたが、大震災による原子力発電所事故によって、発電量は大きく落ち込みました。2030年代には、そうした原子力発電に代わって、再生可能エネルギーが、主要なエネルギーとなる見通しです。

再生可能エネルギー導入の原動力に

海岸に建つ洋上風力発電 再生可能エネルギーの大幅な拡大の原動力となるのが、風力発電です。現在、風力発電は再生可能エネルギーの中でもそのウエートは小さいのですが、2030年代には、風力発電は再生可能エネルギーの中で10%近くを占めるエネルギーになる見通しです。太陽光発電が、その時点で7%程度の割合となっているのに比べ、それをしのぐ拡大といえます。陸上の風力発電に拡大余地が少ないことから、風力発電のけん引役を担うのは洋上風力発電ということになります。洋上風力発電に対する期待は今後、一段と高まるとみられます。